もう許されたいと思った矢先に、昔の日記帖が出てきて、過去の思い出に縛られた。
現実の君は、もうきっとわたしなんかをとうに忘れ去ってしまっているだろうに、思い出の中の君は、いつまでもわたしを引き止めるね。
「そんなずるいこと、しないで」
呟いてみたけど、行き場を無くした言葉は宙にぷかぷかと浮かんで消えていくだけだった。


眠らなきゃ、眠らなきゃいけないのに、わたしは眠れなくて、ひとりで泣いたりしている。
あの匂いを布団に染み込ませて、目を瞑って顔を思い出そうとしている。声を思い出そうとしている。
だけどもう霞んでしまうんだ。くぐもってしまうんだ。
どうして。忘れたくなんかないのに。


薬をお酒で流し込んで、手首をひっかいた。
赤い肌に赤い線が浮かんで、眩暈を覚えた。
わたしは独りでいるのがお似合いで、たまにぐらついた時にはこの自慰行為にも似た所作で自分を落ち着かせるのがお似合いで、そこに誰かを引き込むのはきっといけないことで。
それでもわたしは誰かを求めてしまう、ただ甘やかしてほしいがために。


内側からゆっくり壊れていく。
きみが何にも知らない間に。