たぶんやっぱり他人を深く愛せないんだと知った春の終わりに、意味のないめくばせに救われた。
「それはまだきみがそういう人に出会ってないだけ」は、なんの気休めにもならない、ただその瞬間に一緒にいてほしいだけだよ、ただその瞬間に頭を撫ぜてほしいだけだよ。
帰り道、トトロの木の下で、いつも立ち止まってしまうような絶望を、君も感じたりするだろうか。君に分かるだろうか。
いつだってわたしは間違ったほうを選ぶ。
恋人じゃなくて妹になりたい。
恋じゃなくて愛ばかり感じてる。


かわいいいやがらせ。
気まぐれなやさしさ。
夜の電車の窓越しの視線。
猫背に乗っかるへんな癖っ毛。
笑うとできる目尻の皺。
触ったあとの咳払い。
薬指の指輪。
誰でもいいわけじゃないけど、君じゃなきゃだめなわけじゃない。


オカリナという名の口笛を吹きながら泳いで帰る。