くだらないことをこぼすわたしに掛けられた言葉はあまりにも優しくて、涙が出るほどいとしく思った。
冬のはじまりの寒い夜、海のそばの小さな建物で初めて会ったわたしたちは、今では手をつないで街を歩いている。
そういえば、あの日もわたしはお気に入りの群青色のワンピースを着ていたっけ。


穏やかに生きていくには、たくさんのことを、ものを、人を、捨てなくちゃね。
それはあまりにもさびしいことだけど、この恋を守るためなら仕方のないことだ。
そうすればわたしは、純潔を取り戻せるような気さえするんだ。


思い出さないようにしている。
あの笑顔や、後ろ姿や、においを。