ぜんぶ失うまで、あと数秒なんだと思う。
こんなふうにあのひとを失うのは、ふがいない。やいやーとは言わない。
だけどきっと、世界はそういうふうにできているんだろうな。
こうなってしまうのは、しょうがないことなんだろうな。
わたしに束縛する権利はないんだろうな。
だから悪あがきはしない。みっともないから。みっともないのは自論に反する。
大切に大切に築き上げてきたものがどうでもいいものによって一瞬にしてがらがらと音をたてて崩れていくのを想像するのは悲しいけれど、もうどうすることもできない。
ああ。あれは最後の夢だったんだね。