地下鉄の中で、向かいに座る外国人の夫婦が眠っていた。
無防備に四肢を投げ出して眠る女性のお腹は、こんもりと丸かった。
あの中に新しい生命があって、いつか思春期を迎えて、大人になって、そうしてそいつもいつかは結婚して子供を産むのかなと思ったら変な感じがした。
水風船みたいにぱんぱんのお腹。
針で刺したらそこから羊水がぴゅうっと湧き出てみるみるお腹がしぼんで最後に胎児がころんと出てくるのかなと考えていたら簡単に光景が浮かんだ。
水で濡れた床に横たわる胎児は金魚鉢から出たそれみたい。


世界から目を背けたいわたしは、子宮に還って羊水の中でただまどろみながらたゆたっていたいよ。