新しく手を差し伸べてくれる人の手を掴もうとしたときに、やっぱりどうしても顔が蘇ってきて、体温を思い出してしまって、指の形を空になぞってしまって、どうしようもなく立てなくなってしまった。
涙がぼとぼと落ちてきたりはしないけど、蹲ってしまう。
諦めがついたと思えていたのに、あれは只の思い込みだったのか。
だけどわたしは君にとって特別な存在でありたい。
だからお前はだめなんだよって、もっとちゃんとしろよって、笑いながら言われたい。
すてきな映画を、音楽を、展示を、一緒に体内に取り込んでいきたい。
色んな角度から君を見てきたからこその関係を手に入れたい。
それにはやっぱりどうしてももう一度一緒になることは許されないんだ。


忘れられない男の子や、素敵な言葉を紡ぎ出す男の人や、学校で見かける人や、よく行くお店の店員さんや、ずっとあの人が嫉妬していたわたしの「アイドル」のひとりにあの人はなった。
その中のいちばんにあの人はなった。
いちばん大切だよ。いちばん好きだよ。いちばんそばにいたいよ。
本当は伝えてみたいけど、それで子犬みたいになるだろうあの人の顔を見てみたいけど、弱虫なわたしは優しいあの人にどうせそんなことできっこない。
ねえ、本当に一番なんだよ。
21年も生きてきたけど、君が一番だった。
あの子より、あの人より、君が一番だって、離れてから気付いたよ。
たくさんたくさん傷つけてごめんね。


次に会ったときには妹みたいに振舞って何の屈託もなく笑うから、頭のひとつでも撫ぜてほしいなんて考えてるわたしをゆるしてね。
早く会いたいよ。