恋人と別れて一年半、いくらかの男の人に対して肯定的な感情を覚えたけれど、それでもあと一歩踏み込めなかったその理由は、自分でも分かっている。
「終わりたくないから始めない」
別れが怖くて誰とも関わろうとしないのは、交通事故が怖くて外に出ないことやおなかをこわすのが怖くて物を食べないことと同じ程くだらないことで、それでもわたしは誰かと対等に向き合って深く関わることによって知る痛みや悲しみや苦痛から逃げ回っている。
きみがぼくで、ぼくがきみで、世界はふたりでできていて、ふたりは球体の中にいて、誰もそこには介在できなくて、なんて、そんな夢みたいな関係が存在し得ないということは疾うに分かった。
同じ世界を見て、異なる感情を抱いて、それを分かち合って、そうして世界が広がるといいねって、そういう風にも思えるようになった。
だけどやっぱりまだ怖い。
差し出されたその手にわたしが手を伸ばしたら、いつか君はいなくなっちゃうのかな。


そんなことを思っている間に、みんなみんな、わたしに呆れて去っていくのね。